MONEY
2022.02.01
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フリーランスとして働くうえで必ず知っておきたい源泉徴収の仕組みや制度。会社員時代には会社から源泉徴収票を毎年もらっていたものの、そもそも源泉徴収とは何なのかを理解していなかった人も多いはず。
フリーランスになると自分で管理をしなければいけないため、源泉徴収されなかった場合はどうすればいいのか、確定申告ではどうすればいいのかなど、知っておくべきことがたくさんあります。本記事では、源泉徴収の基本から困ったときの対応方法まで解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
そもそも源泉徴収制度とは、支払うべき所得税をあらかじめ会社やクライアントが差し引き、代わりに納税をする制度のことです。フリーランスとして仕事を受けて報酬をもらう場合は、クライアントがその報酬からあらかじめ所得税を計算して差し引き、国に納めてくれます。
源泉徴収制度は法律で定められているものであり、人を雇用している場合はもちろん、業務委託契約であっても対象とされている範囲の業務に対しては必ず行わなければいけないものです。仮に源泉徴収を行わなかった場合は、延滞税などを負担する可能性もあります。
ただし、これは源泉徴収をする側に発生する義務です。フリーランスとして報酬を受け取っていて、本来なら源泉徴収されるべき業務であるにも関わらずしてもらえないという場合でも、責任が生じるのはクライアント側のみ。源泉徴収制度は、報酬や給与を支払う側に責任が生じるものです。
前項で述べた、源泉徴収制度の対象になる業務の範囲には、さまざまなものがあります。
フリーランスとして働いていても、すべての業務が源泉徴収の対象になるわけではありません。自分が行っている業務が対象になるかどうか、必ず確認しておきましょう。
クライアントによっては、源泉徴収額を自分で計算して請求書に書いてほしいと要求してくる場合もあります。そんなときにも困らないよう、源泉徴収額の計算方法も知っておきましょう。
源泉徴収額の計算は、報酬をいくら受け取るのかによって異なります。
【報酬が100万円以下の場合】 源泉徴収額=報酬金額×10.21% 例:報酬額10万円 10万円×10.21%=10,210円(源泉徴収額) 【報酬が100万円以上の場合】 源泉徴収額=(報酬金額−100万円)×20.42%+102,100円 例:報酬額120万円 (120万円-100万円)×20.42%+102,100=102,104円(源泉徴収額) ※1円未満の端数は切り捨て |
とくに報酬が100万円以上になる場合は計算が少し複雑になるので、間違えないようにしましょう。
ちなみに、請求書に報酬額と消費税を明確に分けて記載する場合は、消費税を抜いた報酬額をもとに上記の計算をします。例えば、請求書に「報酬額:11万円」とだけ記載する場合は、11万円に10.21%をかけた額が源泉徴収額に。
「報酬額:10万円、消費税:1万円」と明確に消費税を分けて記載する場合には、消費税抜きの10万円に10.21%をかけます。前者の源泉徴収額は11,231円、後者は10,210円です。仮にここで違いが出ても、最終的に確定申告を行うことで正しく計算されるので問題ありません。
フリーランス側が請求書に源泉徴収額を計算して記載する義務はありません。記載しなかったからといってフリーランス側になにか責任が生じるわけでもありませんが、書いておいたほうがスムーズです。また、クライアントから源泉徴収額を記載するよう指示があるケースも多くあります。
基本的には自分の業務が源泉徴収の対象であれば、源泉徴収額を書くようにしましょう。以下で請求書への記載方法を紹介します。
クライアントへの請求書に源泉徴収額を記載する場合には、報酬・消費税・源泉徴収額を分けて記載します。
品目 |
単価 |
数量 |
金額 |
記事制作費 |
10,000 |
2 |
¥20,000 |
取材費 |
20,000 |
2 |
¥40,000 |
小計 |
¥60,000 |
||
消費税 |
¥6,000 |
||
源泉徴収額 |
-¥6,126 |
||
合計 |
¥59,874 |
上記のように、差し引かれる分にはマイナス記号をつけたうえで赤字で書いておくと親切です。1円未満の端数が出た場合は、切り捨てした金額を記載してください。例えば、計算した源泉徴収額が10,503.2円だった場合には、小数点以下を切り捨てて10,503円と記載しましょう。
源泉徴収された報酬の有無に関わらずフリーランスは全員確定申告が必要ですが、源泉徴収されたものは必ず合計額の申告を行いましょう。源泉徴収されたということはすでに所得税を納めているということなので、源泉徴収額の申告を忘れると税金を二重で支払うことになり損をします。
また、源泉徴収によって支払った所得税は、あくまでもおおよその見積もりで計算した仮の金額です。場合によっては支払いすぎている可能性もあり、その場合には確定申告によって支払いすぎた分が戻ってきます。正しく税金を納めつつ、損をしないようにしっかりと申告しましょう。
確定申告書には、「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額」という欄が設けられています。ここに1年間で差し引かれた源泉徴収額の合計を記載すればOKです。ただし、すべて手で行うのは大変なので、あらかじめ源泉徴収額は以下の方法で管理しておくことをおすすめします。
日々の売上や経費の管理を会計ソフトで行っておくと、確定申告でわざわざ細かい項目を入力する必要がなくなります。会計ソフトで管理していない場合は、確定申告時に膨大な請求書や領収書などを整理して細かく計算を行い、確定申告書へ記載することが必要です。
日々かかった経費や受け取った報酬、差し引かれた源泉徴収額をその都度会計ソフトで管理しておけば、確定申告時には簡単な質問に答えるような感覚でスムーズに書類の作成ができます。正しく納税を行うことはもちろん、余計な手間がかからないようこまめに会計ソフトで管理を行っておきましょう。
会計ソフトに源泉徴収額を記帳する場合の仕訳は、「事業主貸」や「仮払税金」の項目で入力します。会計ソフトによっては、売上を入力するときに「源泉徴収された場合はここに額を入力」と簡単にわかるような入力欄を用意してくれている場合も。
最近の会計ソフトはどれも親切に作られているので、感覚で操作できるはずです。分からなければサポートセンター等に問い合わせれば、丁寧に教えてくれます。
フリーランスであっても、源泉徴収をする義務者の立場になるケースがあります。本来、源泉徴収を行う必要のある立場なのに理解せずにいると、延滞税等をとられてしまう可能性も否めません。以下で解説する内容をしっかり把握しておきましょう。
フリーランスであっても、従業員を雇用した場合には源泉徴収義務者の立場になります。
反対にいうと、前項で紹介した源泉徴収の対象である業務をフリーランスが誰かに依頼した場合でも、フリーランスが従業員を雇用している立場でなければ源泉徴収をする必要はありません。
たとえば、フリーランス(個人事業主)として働くAさんが、同じくフリーランス(個人事業主)として働くBさんに原稿執筆を依頼したとしても、Aさんが従業員を誰も雇用していなければAさんは源泉徴収義務者にはなりません。
フリーランスが源泉徴収義務者になるのは、従業員を雇用したときか、法人に移行したときのみです。ただし、従業員を雇用しても、それが2人以下のお手伝いさんのような家事使用人だけであれば、源泉徴収義務者にはなりません。
仮に源泉徴収義務者の立場に該当する場合には、忘れず源泉徴収を行ってください。源泉徴収をしなかった場合には、ペナルティとして延滞税に加え、10%程度の不納付加算税が徴収されてしまう可能性もあります。無駄にお金を払うことがないよう、必ず忘れずに源泉徴収を行いましょう。
源泉徴収を行って源泉所得税を徴収したら、「所得税徴収高計算書」を作成して金融機関か税務署に納付を行ってください。源泉徴収をした翌月の10日までに納付しなければいけないので、遅れないよう注意しましょう。
直接金融機関や税務署へいって納付することもできますが、ネットからの納付もできます。また、従業員が10名未満の場合には、年2回にまとめて納税することも可能です。毎月納税するのは手間がかかるという場合には、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を出したうえで年に2回の納税に切り替えましょう。
一人で働くフリーランスの場合は、なるべく納税の手間を省くことが重要です。ネットでの納付とともに、年に2回の納付に切り替えることを検討してみてください。
ここからは、フリーランスの源泉徴収に関してよくあるQ&Aを紹介します。困ったときに役立つものをまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
従業員を雇用する個人事業主や企業は本来源泉徴収をしなければいけない立場ですが、一部例外もあります。先述した、源泉徴収の対象になる業務以外のものであれば、原則企業(クライアント側)であっても源泉徴収は不要です。
もし自分の業務が源泉徴収の対象であるはずなのに源泉徴収されていない場合には、クライアントが気づかず報酬額をそのまま支払っている可能性もあります。自分の業務が源泉徴収の対象である場合は、あらかじめ請求書に源泉徴収額を記載しておいたほうがスムーズです。
源泉徴収されなかった場合でも、責任が生じるのは源泉徴収義務者であるクライアント側なので、その時点でフリーランスが何かしなければいけないことなどはありません。
ただし、源泉徴収されなかったからといって所得税を納めなくていいというわけではないので、必ず確定申告を行って納税をしましょう。複数のクライアントと付き合いがある場合には、源泉徴収された報酬とされていない報酬にわかれることもあるので、間違いのないようそれぞれしっかりと記帳しておくことが大切です。
源泉徴収されていたのに申告が漏れていると、所得税を二重で支払うことになり損をします。また、本来支払いすぎていて還付されるべき金額があるのに、知らずに逃してしまうという事態にもなるので、気をつけましょう。
すでに源泉徴収された報酬がある場合は、確定申告時に合計額を申告しましょう。確定申告書に「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額」という欄があるので、そこに源泉徴収された合計額を記載します。
会計ソフトで売上とそれに伴う源泉徴収額の管理を行っていれば、自動で合計額が申告書に記載されて便利です。また、確定申告の時期になってからこれまでの源泉徴収額をすべて確認する手間も省けるので、できれば会計ソフトで管理することをおすすめします。
原則フリーランスに源泉徴収票は発行されず、クライアント側に発行義務もありません。確定申告においても、源泉徴収票を提出する必要はありません。とはいえ、源泉徴収としていくら差し引かれたのかがわからないと、確定申告でいくら申告すればいいのか正確に分からず、困りますよね。
源泉徴収票の発行がなくても、クライアント側に源泉徴収でいくら差し引いたのかを問い合わせることはもちろん可能です。むしろ、正しく確定申告するためには必ず問い合わせを行う必要があります。源泉徴収票でなくても、いくら差し引いたのかが分かる書類をもらえば問題ありません。
源泉徴収票も支払調書も、報酬や給与を支払った側がいくら源泉所得税を支払ったのかを記載して報告するための書類です。源泉徴収をした相手が誰なのかによって変わります。
源泉徴収票は、企業が従業員に支払う給与から源泉徴収を行った際に発行するものです。一方支払調書は、フリーランスなどの個人に対して支払った報酬から源泉徴収をした場合に発行するもののことをいいます。
つまり、厳密にいうとフリーランスが受け取るものは、源泉徴収票ではなく支払調書だということです。
また、源泉徴収票は従業員と税務署に提出する義務がありますが、支払調書は税務署に対してのみ提出義務があります。前項でも説明したとおり、クライアント側にはフリーランスへ源泉徴収額がわかるものを発行する義務はありません。
ちなみに、源泉徴収票も支払調書も、税法上では「法定調書」という書類に位置づけられるものです。何十種類もある法定調書のなかに、源泉徴収票と支払調書がふくまれると考えてください。
源泉所得税と所得税は、いずれも働いて得たお金に対して発生する税金であることには違いがなく、ざっくりいうと同じものと捉えても問題ありません。厳密には、以下のような違いがあります。
所得税とは、所得がある人は全員納めなければいけない税金のことで、納税者本人が納める税金のことです。一方源泉所得税は、報酬や給与を支払う側が代わりに徴収し、国へ納めるもののことを指します。
結果としてはいずれも得たお金に対してかかる税金なので違いはありませんが、税法上では上記のような違いがあります。
源泉徴収制度は、納税者の負担を軽減させることや、滞納を未然に防止するために設けられた制度です。会社員の場合であれば、会社に任せておけば自ら申告する必要なく納税を行うことができるうえ、払いすぎた分も勝手に還付されます。
フリーランスの場合は、源泉徴収されていたとしても自ら確定申告する必要があるので、忘れないようにしましょう。
フリーランスが理解しておくべき源泉徴収制度について解説しました。フリーランスがやるべきことは、源泉徴収されたものとされていないものとでしっかりと分けて管理し、確定申告のタイミングで正しく申告をすることです。
仮にクライアントから源泉徴収してもらえなかったとしても、自分で正しく確定申告をすれば問題ありません。税金の申告漏れ・二重払いなどに陥らないよう、売上や源泉徴収額は毎月しっかりと管理しておきましょう。