MONEY
2022.02.10
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「個人事業主は雇用保険に入れるのだろうか」、「個人事業主なんだけど、失業保険ってもらえるの」など、個人事業主の方、あるいはこれから個人事業主になる方で雇用保険・失業保険についてお悩みの方もいるでしょう。
社会保険の一種なので会社員の方など、条件に該当する場合は加入が義務付けられていますが、個人事業主の場合は加入する必要があるのでしょうか。
本記事では、個人事業主が雇用保険(失業保険)に加入しなければならないのはどのようなケースか、個人事業主でも失業保険を受け取れるのかなど、個人事業主が知っておくべき雇用保険(失業保険)の情報をまとめてご説明します。
目次
雇用保険は雇用されている労働者が病気やケガ、介護などで働けなくなってしまったときや、失業してしまった場合に労働者を助けるために作られた社会保険制度です。
雇用保険で受給できる一番基本的な手当が失業手当です。失業手当は、失業した労働者が次の雇用元を見つけるまでの期間、国から給付金が支給されます。失業した理由や雇用保険の加入期間によってもらえる給付額は変動します。
また、一歳未満の児童を養育するために育児休業を取得した際には雇用保険から「育児休業給付」が支払われます。育児休業給付の給付金額は半年間は給与日額の67%、半年以降は給与日額の半額が支給されます。さらに「パパママ育休プラス制度」を利用すると受給期間を伸ばすことができます。
数々の給付金がもらえる雇用保険ですが、個人事業主の場合は原則として加入することはできません。
そもそも、個人事業主には失業という概念はありませんので、失業手当はもらえません。また、育児休業給付もないので、育児の際に仕事を休むなら社会保険とは違う手段で貯蓄を蓄えておく必要があります。
「個人事業主が副業をしている」という状況は多くの場合、2つ以上の職業を「個人事業主として」営んでいる状況でしょう。例えば、Webデザイナーが本業でYouTuberが副業というようなケースです。このようなケースでは、2つとも個人事業なので、「失業」という概念が当てはまりません。そもそも「失業」という概念が当てはまるのは雇用されている労働者だけなので、このケースでは失業手当はもらえません。
個人事業主が「ダブルワーク」をしているケースを考えてみます。個人事業主が「ダブルワーク」をしている場合とは、営んでいる個人事業とは別に雇用されて働いているケースです。
この場合、特定の条件下では個人事業主でも雇用保険に加入が可能です。
雇用主は週20時間以上働く労働者を雇用保険に加入させる義務があるので、雇用保険に加入することになります。つまり、個人事業主で雇用保険に入りたい場合には、ダブルワーク先で週20時間以上働けばいいことになります。しかし、週20時間以上働くとなると本業が疎かになってしまうでしょうから、バランスについてよく考えなければならないでしょう。
会社員から個人事業主になりたての方が、失業手当を受け取ることは不可能ではありません。個人事業主として開業したことを届け出ずに、失業手当を受け取るパターンです。実際に、個人事業主として開業したばかりの頃は売り上げも立っておらず、実態としては「失業している」ように見えるので、上手くいけば個人事業主として軌道に乗るまで失業手当をもらい続けることもできるでしょう。
しかしながら、このようなやり方は法的には認められていません。不正受給がバレてしまった場合には、まず「不正受給」の金額をすべて返還することになります。さらに、不正受給による「罰金」として不正受給した金額の2倍の金額を返還しなければなりません。つまり、不正受給をした3倍の金額を支払うことになるのです。
罰則は金銭的なものだけには留まりません。悪質なケースの場合には、詐欺罪を問われ刑事告訴されます。個人事業主としてすでに売り上げが立っている場合などは、詐欺罪として立件される可能性は高いでしょう。
個人事業主が雇用保険に加入するケースはありますが、個人事業主本人に保険をかけるためではありません。あくまで個人事業主が雇い入れた被雇用者のために雇用保険に入るのです。そのため、どちらかというと雇用保険に「入らされる」といったイメージのほうが正しいでしょう。
個人事業主がほかの従業員を雇い入れているすべてのケースにおいて雇用保険に入らなければならないわけではありません。以下の2つの条件に当てはまる場合にのみ、個人事業主が従業員のために雇用保険に入る必要があります。
一つ目の条件は「雇用されてから31日以上、業務に従事する可能性があること」です。
もし雇い入れた従業員が31日以上働くことがなかったとしても、あくまで雇い入れた時点で31日以上働く可能性がある場合には、雇用保険に加入しなければなりません。もし31日以上雇用しないことが明確であれば、雇用契約の時点でその旨を明確に記載しておくことで雇用保険への加入を免れることもできます。
二つ目の条件は「1週間の労働時間が、20時間以上働く契約」になっていることです。
もし残業が多い週だけ20時間を超える労働をしていたとしても、雇用保険の加入対象にはなりません。あくまで、雇用保険に加入するのは週の「所定労働時間」が20時間を超えるときのみです。
個人事業主が自分以外の従業員を雇い入れ、雇用保険(失業保険)への加入義務があるにもかかわらず、雇用保険に加入していなかった場合には法律違反となります。
個人事業主が従業員を雇い入れる場合で、所定労働時間が20時間/週を超え31日間以上雇い入れる見込みがある場合に雇用保険(失業保険)に加入義務が発生することはご紹介しました。
この他にも、特殊な条件で雇用保険の加入義務が発生するケースがあります。本項では、特殊な条件について解説します。
個人事業主は親族を雇用保険に入れることができるのでしょうか。原則としては、個人事業主は親族を雇用することはできません。ただし、個人事業主の親族を雇用保険の被保険者にすることができる例外もあります。
個人事業主と利益を一にする地位(取締役など)に該当しないこと、個人事業主の指揮命令に沿って働いている実態があること、さらに個人事業主が雇っている他の労働者たちと一緒の労働条件下で働いている事実があること、これらの条件をすべて満たした場合にのみ、個人事業主の親族を雇用保険に入れることができます。
個人事業主が従業員やアルバイト、パートなどを週20時間以上雇用する場合、雇用保険に加入しなければなりません。「雇用保険」と聞くと金額について不安になるかもしれませんが、雇用保険料自体はそこまで高くありません。
雇用保険料の計算式は、「賃金総額×雇用保険料率」です。「賃金総額」とは、給与だけでなく、その時々の残業代や深夜残業手当、賞与などのすべての支払い金額を含めたものです。そのため、健康保険料の計算で使われている「標準報酬月額」の数字とは異なります。
雇用保険料率は年度ごと、業種ごとに異なりますが、業種ごとの違いはそこまで大きなものではありません。令和4年度の4月から9月の保険料率を例としてご紹介します。「一般の事業」の場合、全体の雇用保険料率は9.5/1,000で、労働者負担が3/1,000、事業主負担が6.5/1,000となります。また、「農林水産業及び清酒製造業」の場合、全体の雇用保険料率は11.5/1,000、「建設業」の場合、全体の雇用保険料率は12.5/1,000となります。
「一般の事業」を営む個人事業主が、「賃金総額」10万円のアルバイトを雇用しているとします。このとき、個人事業主が支払わなければならない雇用保険料は「10万円 × 6.5/1,000」 = 650円(月額)になります。このように、「雇用保険料」と聞くと「支払いが大変そう」というイメージですが、実際には支払う金額はさほどの金額ではありません。
雇用保険に加入しなければならないことがわかった場合、雇用保険に加入する手続きをしなければなりません。雇用保険に加入しなければならない条件に合致した従業員やアルバイト・パートを雇用した翌日から10日以内に、ハローワークで手続きを行います。
まず、「保険関係成立届」と呼ばれる書類を提出します。「保険関係成立届」は会社の概要や雇用者の数などの基本的な情報を記入するものです。また、「雇用保険適用事業所設置届」と呼ばれるものも提出します。会社名や住所、被保険者の情報などを記入するものです。最後に「雇用保険被保険者資格取得届」と呼ばれる書類も提出します。この書類を提出することで、雇用保険に加入することになる被保険者の「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書」が渡されます。この2つの書類は被雇用者本人に必要になるものなので、必ず渡しておきましょう。
逆に、雇用していた従業員が離職した場合や、従業員が死亡してしまった場合には雇用保険の脱退手続きが必要になります。被保険者が被保険者でなくなった日の翌日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」の2つの書類をハローワークに提出します。
個人事業主として従業員やアルバイトを雇用する際には、被雇用者に手渡すことになる手当の種類や内容について知っておく必要があります。そこで本項では、雇用保険に加入することで受け取れるようになる手当についてご紹介します。
雇用保険の求職者給付とは、いわゆる「失業手当」のことです。求職者給付を雇用保険の被保険者がもらうためには3つの条件を満たさなければなりません。
一つ目の条件が「失業状態」であることです。失業状態とは、雇用を失っていて求職活動をしている状態を指します。
二つ目の条件は、雇用保険の加入期間が通算12ヶ月以上あることです。
三つ目の条件は、ハローワークに求職の申し込みをしていることです。
これら3つの条件を満たすことで、雇用保険の求職者給付をもらうことができます。また、退職理由が自己都合か会社都合かによって求職者給付をもらえる日数が変わるのと、退職前の給与によって給付金額が変動します。
就職促進給付は、雇用保険の被保険者が失業状態から再度雇用された場合に支給される諸手当のことを指します。就職促進給付には「再就職手当」「就業促進定着手当」「就業手当」「常用就職支度手当」の4つの給付金があります。
「再就職手当」は、雇用保険の被保険者であった失業者が再就職を果たし、基本手当の支給残日数が所定日数の1/3以上残っている場合に支給されることがある手当です。
「就業促進定着手当」は、再就職手当をもらっている方が、再就職先で6ヶ月以上雇用されていて、1日の賃金額が離職以前の賃金額よりも下がっている場合にもらえる手当です。
「就業手当」は、雇用保険の被保険者であった失業者が常用雇用以外の雇用形態で再雇用された場合にもらえる可能性がある手当です。
「常用就職支度手当」は雇用保険の被保険者であった障害者の方などが再就職を果たして一定の要件を満たした場合に、支払われる可能性のある手当です。
雇用継続給付とは、被雇用者の職業生活の継続を支援するために雇用保険の被保険者を対象に支払われる給付金で、「育児休業給付」「介護休業給付」「高年齢雇用継続給付」の3種類があります。
「育児休業給付」は、1歳未満、あるいは1歳2ヶ月未満の児童を養育するために育児休業を取得した場合に、各種要件を満たしていればもらうことができる給付金です。勘違いされがちですが、「育児休業給付」は健康保険ではなく雇用保険の被保険者にしか支払われないため、雇用主である個人事業主は受け取ることができません。
「介護休業給付」は、家族を介護するために休業をした雇用保険の被保険者を対象に支払われる給付金です。介護保険から介護休業給付が支払われるわけではないので、40歳以上であっても個人事業主の方は「介護休業給付」はもらえません。
「高年齢雇用継続給付」は、雇用保険の被保険者で60歳以上の方が、60歳時点に比べて75%未満の賃金に低下した状態で働いている場合に支給される給付金です。
職業訓練給付は、雇用保険の求職者給付(失業手当)の受給資格期間が終了してしまった方や、そもそも雇用保険に加入していない方が受け取れる給付金です。雇用保険とはそもそも関係ありませんのでご注意ください。
職業訓練給付をもらうためには、雇用保険に加入していないこと以外にも複数の条件を満たしている必要があります。まずはハローワークに求職の申し込みをしていて、積極的に求職活動を行っている失業者であることが条件です。また、労働の意思と能力があること、さらに、ハローワークが職業訓練の必要性について認めたことなどが条件になっています。
職業訓練給付は月10万円と非常に高額なので、雇用保険に加入できない従業員を雇っている場合には、ぜひ覚えておき、従業員が離職する際に教えてあげると親切です。
以上、個人事業主と雇用保険の関係についてご説明しました。
個人事業主の方は基本的には雇用保険(失業保険)に入れません。つまり、失業手当ももらえないことになっています。ただ、会社をやめたばかりの段階で、個人事業主として申告しておらず、求職しているように見せれば、失業手当をもらえないこともないです。ただし、法律に違反することなので、バレるともらっていた失業手当の3倍の罰金を支払うことになるほか、最悪の場合は詐欺罪で起訴されることもありますので、やめておきましょう。
個人事業主の方が雇用保険に加入しなければならないのは、所定労働時間が20時間以上の労働者を雇う場合です。その場合、雇用保険への加入は義務になりますので必ず加入しましょう。