消費税転嫁対策特別措置法は、消費税増税に際し、消費税の転嫁拒否等の不当行為を取り締まり、円滑かつ適正に消費税の転嫁を確保する目的で定められました。次の4つの事項について、禁止事項や特別措置が設けられています。
①転嫁拒否行為の禁止
②消費税の転嫁を阻害する表示の禁止
③総額表示義務の特例
④転嫁カルテル・表示カルテルは独禁法の適用除外
①転嫁拒否行為の禁止
■減額……当初は仕入額を5,500円としていたのに、仕入先に対して理由もなく2,000円しか支払わない等、一度事業者間で取り決めた商品やサービスに対する金額を、後になって合理的な理由もなく減額するよう仕入先に要求する行為
■買いたたき……本来であれば税率10%の1,100円で仕入れをしなければならないところを、税率8%の1,080円でないと取引をしないとする等、税率引き上げ前の金額でないと取引を拒否する行為
■商品購入、役務利用、利益提供の要請……消費税分は支払うからこの商品を購入してほしいと要求する等、消費税の上乗せ額を支払うことを条件に、自社や関係者の商品・サービスを購入させる行為
■本体価格での交渉拒否……仕入先から税込みではなく本体価格での価格交渉をしたいと申し出があったにもかかわらず、税込み価格のみを用いて交渉を続ける等、事業者間で価格交渉を行う際、税抜き価格での交渉を拒否する行為
■報復行為……転嫁拒否行為を通報したことを理由に、取引を打ち切る等の不利益な取り扱いをする行為
②消費税の転嫁を阻害する表示の禁止
■「消費税はいただきません」「消費税還元セール」等、取引先の相手に消費税を転嫁していない(消費者が消費税を負担していない)かのような表示の禁止
■「増税分は値引きいたします」等、消費者が消費税を負担していないかのような表示の禁止
■「消費税相当額をキャッシュバックします」等、経済上の利益を消費税に関連して提供する旨の表示の禁止
③総額表示義務の特例
小売業者による価格表示については、従来から税込価格で表示することが義務付けられていますが、税込みと誤認されないようにしていれば、税抜価格による表示も認められています。
「1,500円(税抜価格)」「10,000円(税別)」「500円(+税)」等の表示は税込み価格と誤認されないとして、認められています。
④転嫁カルテル・表示カルテルは独禁法の適用除外
同業種の企業が商品・サービスの価格や生産数量等を共同で取り決めることを「カルテル」といいます。複数の企業がカルテルを結ぶと、質の競争が無くなり、また高い価格設定となってしまい消費者にとってデメリットとなるため、カルテルは独占禁止法によって禁止されています。
ただし消費税の転嫁においては例外。転嫁の方法(消費税額の上乗せ分を決定、生産端数の合理的な判断等)を決めるためのカルテルや、価格の表示方法を決めるためのカルテルは、事業者同士で行われても問題はありません。この場合、公正取引員会に届け出をする必要があります。