MONEY
2020.01.15
MONEY
2020.01.15
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こんにちは、弁護士の松本隆です。
「個人事業主」のテーマ後編です!
率直に申し上げると、
裁判などの「法的手続を使わなければならなくなってしまっている」時点で
すでに「半分負け」のようなものです。
なぜなら、本当は仕事をすれば普通にもらえるはずの代金が
法的手続をしなければもらえなくなってしまっているからです。
(しかも代金が取れない可能性すらある状況です)
ですので、以下では
そもそもこのような事態に陥らないためにできることを解説します。
前払いをしてもらえるのであればリスクは最も小さくなります。
こういう話をすると
「今まで後払いでも大丈夫だったから」
「今までトラブルはなかったから大丈夫」
とおっしゃる方がいますが
たかだか数年間大丈夫だっただけで
今後もずっと大丈夫だという保証はありません!
「自分だけは大丈夫」と思っている人はとても多いです。
(私も後払いにしたために弁護士費用を踏み倒されてしまった経験があります・・・)
この点、私の知人が経営するオーダーメードの靴屋さんは
「完全前払制」(=お金を全額払っていただかないと仕事に着手しない)
にしているので弁護士の法律相談いらずです。
したがって、前払いができるのであれば前払いにしてしまうのがベストでしょう。
「じゃあどうやって前払いにすればいいの?」
と質問をしたくなる方もいらっしゃると思います。
例えばですが、
1回目は仕方がないとしても
仕事内容に間違いがなければ相手は今後もあなたに依頼したいはずです。
ですので、
「2回目以降の契約は前払いにしていただけませんでしょうか。」
というような形で積極的に前払いにする交渉にチャレンジしてみるのがよいと思います。
完全前払いが難しいにしても
「前金」である程度の金額をいただいてから仕事をすることで
リスクを可能な限り減らしていくということもできます。
契約書は「原稿を作った方が有利」です。
細かい規定などは
原稿を作る側が決められますので
相手が「どちらが作ってもいい」と言っている場合には
「絶対に自分で作った方がいい」のです。
最初のうちは弁護士に相談したり
契約書の添削や作成をしてもらったりして
自分なりの契約書の最適なフォーマットを作ってしまう
のがいいと思います。
私のお客様の会社の中にも
契約書を締結する際には必ず相談にいらっしゃる会社があります。
社長の方がとても勉強熱心で
ご自身で契約書をかなりのレベルまで作れるようになっています。
弁護士としても自分で契約書をそれなりに作れるお客様であれば
チェックする部分は少なくなるので
弁護士費用を低くすることができます。
個人事業主で作成する契約書は
「業務委託契約書」
が圧倒的に多いでしょう。
ただ、「委託」といっても
委任(今回の場合は準委任)なのか、請負なのか、その両方を含むものなのか
内容はさまざまです。
準委任は、ある行為をすることを任せることですので、成果物を出すことは必ずしも必要ではありません。
受託者(仕事を受けた側)は委託者(仕事を依頼した側)に対して「作業1時間あたりいくら」という形で報酬を請求できます。
仕事内容としては、例えば、
・ホームページを定期的にメンテナンスする仕事
・ソフトウェアの開発のために技術指導をする仕事
になります。
請負は、仕事の完成を目的にするので、成果物を出すタイプのものです。
請負人(仕事を受けた側)は注文者(仕事を依頼した側)に成果物を出さなければお金をもらうことはできません。
仕事内容としては、例えば、
・ホームページの制作の仕事(成果物は「完成したホームページ」)
・アプリの開発の仕事(成果物は「完成したアプリ」)
になります。
委任と請負は適用される民法の条文も違いますのでそれらに留意した契約書にすることが求められます。
契約をする当事者双方が委任か請負かはっきりしないまま契約を結ぶなどということは絶対に避けるべき事態です(トラブルになる可能性が非常に高くなります)。
まず、契約書を作る上で重要なポイントは
「委託を受ける業務の内容をはっきりと決める」
ということです。
やるべき仕事をしっかりと線引きするために業務内容はふわっとしたものにしないことが重要です。
例えば、準委任の場合、
・自分がメンテナンスするホームページがどれとどれなのかを確認し、任された仕事の範囲を明確にすること
・提出する業務報告レポートがあるとすれば月何回すればいいのかを明確にすること
・業務にあたって与えられる権限を明確にすること
・契約期間(更新が必要か自動更新か)、報酬の金額(税抜か税込か)、支払日(当月払いかどうか)を明確にすること
・可能であれば損害賠償額の上限を設ける
(例えば、損害賠償額は報酬の金額の数か月分を上限とする。)
などが重要です。
また、請負の場合、
・完成すべき目的物が何であるかを明確にすること
・仕事の完成期限がいつであるのか明確にすること
・知的財産権の帰属を明確にすること
・瑕疵担保責任(令和2年4月の民法改正後は「契約不適合責任」)の定めを民法より軽くするかどうか
・代金減額請求(令和2年4月の民法改正によって新たにできる制度)の定めを民法より軽くするかどうか
などが重要です。
民法の規定よりも契約書の規定の方が優先するので
契約書の内容によって民法の規定より責任が軽くも重くもなってしまうのです。
そうだとすれば契約書を自分で作らない理由はありません。
相手が作るにしても内容を弁護士と一緒に吟味して中身の変更を相手に求めるということは必要になることは多いと思います。
また、
特に請負のタイプでありうるのですが
例えば、
「作ってもらったシステムが十分なものではないので代金を支払わない」とか
「不具合があるから直すまで代金を支払わない」とか
いう主張を相手(クライアント)からされる可能性があります。
契約書がない場合や
契約書の内容に不備がある場合には
このようなトラブルが多いので
この点からも契約書をしっかり作ることが求められます。
テーマが代金をとりっぱぐれないためにどうすればいいかでしたのでその点にもう少しダイレクトな話に触れます。
これも請負のタイプでよくあることなのですが、
「製作途中で契約を解消された場合、
途中までできた成果物に対する報酬をいくらかにするか」
でもめることがあります。
そういう場合に備えて、
A段階まで制作した場合にはいくら、B段階まで制作した場合にはいくら、などというように段階的に報酬を設定する
という方法が考えられます。
他にも、「途中で契約が終了となった場合には違約金としていくらを支払う」
という損害賠償の予定(違約金条項)を作っておけば
裁判をした場合にも請求額が明確になり早期解決が可能です。
後編はいかがでしたでしょうか。
小さな規模でやっているからこそ
1つ1つの契約にはちゃんとこだわり
しっかり進めていくのがよいです。
法律知識はあるに越したことはありません。
取材協力:弁護士 松本 隆 先生
神奈川県弁護士会所属
所在地 神奈川県横浜市中区山下町70土居ビル4階
TEL 045-651-5115
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