MONEY
2023.03.02
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2019年にルールが変更され、少しわかりづらくなった法人保険の損金ルール。ルール変更前までは保険料の大半が損金に算入できていたものの、現在では状況によってさほど損金に算入できないケースが増えました。損金算入ルールは状況によって細かくわけられるため、きちんと詳細を確認しておくことが重要です。
本記事では、法人保険の算入ルールについてわかりやすく解説します。新ルールと旧ルールの違いや、各種保険ごとのルールも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
法人保険は、企業が節税するために有効な手段として人気があった商品です。以前は保険料のすべてもしくは半分、三分の一程度は損金に算入できたほか、保険料の80〜100%が戻ってきていたため、節税効果が高い手段として多く利用されていました。
支払った保険料を全額損金として算入したうえで、解約返戻金が最も高くなるタイミングで退職金として支給し、損金計上してさらに節税効果を得ていたのが特徴です。
節税目的で加入する企業が多かったことから、保険会社も節税目的に特化した保険を販売するなど、業界全体として行き過ぎた状況だったといえます。
その結果、国税庁が法人保険を活用した節税対策が行き過ぎていると判断し、2019年10月に保険料の損金算入ルールを変更しました。ルールが変更されてからは、一概に節税効果が高いとはいえなくなったのが現状です。
新ルールと旧ルールでは、基本的な考え方は変わりません。各保険商品の実態を踏まえ、現行の取扱いと整合性がとれた資産計上ルールにすべきだといわれており、根本的な考え方は同じです。主には、以下のような違いがあります。
【旧ルール】
・基準になる数値は保険期間
・保険期間ごとの損金算入割合の計算区分は2段階
【新ルール】
・基準になる数値は解約返戻金のピーク時の返戻率
・保険期間ごとの損金算入割合の計算区分は3段階
新ルールでは、保険期間の長さではなく、解約返戻金の返戻率に着目して計算方法をより細かくしています。
以下では、定期保険の損金算入ルールをケースごとに解説します。ピーク時の返戻率によって変わるので、細かく確認しておきましょう。
ピーク時返戻率が50%以下の場合は、全額を損金に算入することができます。契約した年齢や保険期間の長さなども関係ありません。解約返戻金を受け取ったら、全額が益金として雑収入に加算されます。
ピーク時返戻率が50%超〜70%の場合は、以下2つのパターンに考え方がわけられます。
被保険者1人あたりの年間保険料が30万円以下の場合には、全額を損金として算入できます。1人あたりの保険料なので、複数名いても1人あたりの保険料が30万円以下であれば全員分を損金にすることが可能です。
被保険者1人あたりの保険料が30万円を超える場合は、3段階にわけて損金算入割合を計算します。
【①保険期間のうちはじめの4割の期間】
全保険期間のうちはじめの4割の期間は、支払った保険料の40%が資産、60%が損金扱いにできます。はじめの4割の期間とは、たとえば保険期間が10年であればはじめの4年間です。
【②保険期間のうち4割の期間を超えたあとから7.5割までの期間】
4割を超えたあとから7.5割までの期間には、保険料の全額を損金にできます。仮に保険期間が10年の場合だと、5年から7年半の間は全額損金にすることが可能です。
【③保険期間のうち7.5割の期間を経過したあと】
7.5割の期間が経過したあとも、保険料の全額を損金として算入することができます。あわせて、はじめの4年間で資産計上した保険料は、残りの保険期間中に均等に切り崩して損金計上することが可能です。
ピーク時の返戻率が70%超〜85%の場合も、3段階にわけて損金算入割合を計算します。
【①保険期間のうちはじめの4割の期間】
全保険期間のうちはじめの4割の期間は、支払った保険料の60%が資産、40%が損金扱いにできます。はじめの4割の期間とは、たとえば保険期間が10年であればはじめの4年間です。
【②保険期間のうち4割の期間を超えたあとから7.5割までの期間】
4割を超えたあとから7.5割までの期間には、保険料の全額を損金にできます。仮に保険期間が10年の場合だと、5年から7年半の間は全額損金にすることが可能です。
【③保険期間のうち7.5割の期間を経過したあと】
7.5割の期間が経過したあとも、保険料の全額を損金として算入することができます。あわせて、①の期間で資産計上した保険料は、残りの保険期間中に均等に切り崩して損金計上することが可能です。
ピーク時返戻率が85%を超える保険の場合は、少し計算が複雑です。保険期間を4段階に分けて、ルールが決められています。
【①保険期間のうちはじめから10年目までの期間】
支払った保険料のうち、以下の計算式で算出した金額を資産として計上し、残りの金額を損金に計上できます。
・支払った保険料×(最高解約返戻率×90%)
【②保険期間のうち11年目以降から最高解約返戻率になる期間の終了日まで】
支払った保険料のうち、以下の計算式で算出した金額を資産として計上し、残りの金額を損金に計上できます。
・支払った保険料×(最高解約返戻率×70%)
【③保険期間のうち②の期間が経過したあとから解約返戻金額が最大になる日まで】
支払った保険料の全額を損金に算入することが可能です。
【④保険期間のうち③の期間が経過したあとから保険期間の終了日まで】
支払った保険料の全額を損金として算入することができます。あわせて、①の期間中に資産計上した保険料は、解約返戻金額が最も大きくなる日から保険期間の終了日まで均等に切り崩して損金計上することが可能です。
保険料の損金算入割合は、保険料の支払い方法が変わっても元のルールが適用されます。支払い方法が変わるとピーク時の返戻率が増える場合がありますが、損金算入ルールが変わることはありません。
仮にもともと保険料を月払いにしていて、ピーク時返戻率が84%程度だった場合に、年払いに変更してピーク時返戻率が88%に上がった場合でも、適用されるのはピーク時返戻率が70%超〜85%以下のときのルールです。
次に、第三分野保険の損金算入ルールについて解説します。第三分野保険のうち、定期払いと全期払いの終身は、先述した定期保険と同じルールが適用されるのが特徴です。短期払いの終身は、年間の保険料によってルールが変わります。
短期払いの終身保険で、年間支払保険料が30万円を超える保険の場合は、保険料の払込期間中と、払込期間終了後とでルールが異なります。
【保険料払込期間中】
保険料の払込期間中は、支払った保険料のうち、以下の計算式で算出される金額は損金として計上でき、残りは資産として計上します。
・年間の保険料×保険料払込期間÷保険期間
終身タイプで第三分野保険の保険期間については、116歳-契約年齢で計算される点も覚えておきましょう。仮に30歳で契約した場合は、116歳-30歳で86年で計算します。
【保険料払込期間終了後】
保険料払込期間中に資産として計上した分を、116歳になるまで以下計算式で算出した金額を損金にします。なお、以下計算式は保険料払込期間中に使用する計算式と同じものです。
・年間の保険料×保険料払込期間÷保険期間
短期払いの終身保険で、被保険者1人当たりの年間支払保険料が30万円以下の保険の場合は、支払った保険料の全額を損金として計上することができます。解約返戻金がごくわずかしかない保険も、同様に全額を損金計上することが可能です。
次は、養老保険の損金算入ルールです。死亡保険金の受取人や満期保険金の受取人が、会社か被保険者やその遺族かでルールが異なります。
死亡保険金の受取人が会社で、満期保険金の受取人も会社の場合は、支払った保険料の全額を資産に計上します。死亡保険金も満期保険金も会社が受け取れることは、すべて会社のための保険であることを意味するため、全額が資産として考えられる仕組みです。保険を使って資産を積み立てていると考えてください。
死亡保険金も満期保険金も、受取人が被保険者や遺族の場合は、支払った保険料を全額損金に計上できます。いずれも被保険者側が受け取れることは、福利厚生を目的として会社が保険料を肩代わりする仕組みだからです。被保険者に支払う給与とみなされるため、支払った保険料は給与と同じく源泉徴収を行うことが必要です。
死亡保険金の受取人は被保険者や遺族、満期保険金の受取人が会社の場合は、支払った保険料のうち半分は資産として計上し、残り半分は損金として計上します。会社としての資産を築く目的と、福利厚生の目的の2つが共存しているからです。
終身保険の場合は、保険料の支払い時には資産として計上し、解約返戻金を受け取るときには損金として計上するのがルールです。資産として計上した分は、解約返戻金を受け取ったときに全額を切り崩します。支払った保険料の総額と解約返戻金の額に差額が出た場合は、以下のルールに沿って判断してください。
・支払った保険料の総額が解約返戻金額よりも小さい場合は、差額を益金(収入)とみなす
・支払った保険料の総額が解約返戻金額よりも大きい場合は、差額を損金とみなす
本記事では、新しく2019年から変更された法人保険の損金ルールについて解説しました。ルールが変更されるまでは節税だけを目的に法人保険に加入する意味が十分にありましたが、現在は節税目的で加入するハードルは高いのが現状です。
法人保険の損金計上ルールは、保険の種類やピーク時返戻率などによって細かく分けられているため、間違いのないように確認してルールどおりに計上しましょう。