MONEY
2022.08.05
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フリーランスとして仕事を請け負うにあたって、業務委託契約書を交わすことがあります。
しかし、「業務委託契約書について把握していない」「いつも流し見して契約している」というフリーランスも多いのが実情です。
業務委託契約書のテンプレートやリスクをきちんと把握していない場合、フリーランス側が不利になることも有り得ます。
この記事では、業務委託契約を結ぶ際の注意点、業務委託契約書のテンプレート、契約しない場合のリスクについて解説していきます。
業務委託契約書に関する疑問を解決し、自身の立場を守りながら仕事を請け負いましょう。
目次
業務委託契約は、時にトラブルの元になり得ます。
不要なリスクを軽減するためにも、業務委託契約書に関する注意点を知ることが大切です。
「いつも納期や報酬に関する項目ばかりに着目していた」「クライアントが提示する業務委託契約書の項目しかチェックしてこなかった」という方は、これを機に業務委託契約書に関する知識を深めましょう。
ここでは、フリーランスが業務委託契約書を交わす際に注意すべき事柄について紹介していきます。
業務内容は、業務委託契約書を交わす上で重要な事項のひとつです。
「仕事を請け負うんだから業務内容をチェックするのは当然じゃないの?」と考えられがちですが、委託する側とフリーランス側で業務範囲に関する解釈違いが多発しています。
どこまでが仕事の範囲かを明確にしていない場合、納品後にトラブルへと発展する可能性も考えられます。
想定外の仕事量になることを防ぐためにも、業務の内容は範囲も含めて事前にチェックしましょう。
業務委託契約を締結する際は、契約期間が明確かという点に注意してください。
契約期間を確認するにあたって、納期となる年月日が正確に記載されているか否かに着目する必要があります。
クライアントによっては「修正作業も含めた納期」と考えていることもあるため、納期の定義に関する擦り合わせを行うことも大切です。
また、継続での業務が前提となっている場合は、記載されている納期が1件分なのか全件分かについても確認しましょう。
フリーランス業の資金繰りに直結する報酬は、業務委託契約を行う上で特に念入りに確認すべき項目です。
報酬の欄をチェックする際のポイントは、報酬額、支払い期限の年月日、支払い方法が明確か否かです。
最もポピュラーな支払い方法は銀行振込ですが、手数料などが発生する際はどちらが負担するのかを明確にすることが大切です。
また、経費がかかる業務を請け負う場合は、クライアント側が経費負担する旨が記載されているかも確認してください。
業務委託契約を結ぶ上で意外と見落としがちなのが、納品に関する条件です。
納品の条件は、クライアントによって異なります。
単に成果物を引き渡すことで納品となる場合もあれば、修正対応を経て納品完了と見なされるケースもあります。
「思いがけず修正作業をすることになった」「修正に時間を取られてスケジュールが狂った」という事態を防ぐためにも、納品が完了となる条件や修正回数などに関する情報をクライアント側と擦り合わせておくのがポイントです。
業務委託契約書を交わす際は、知的財産権がフリーランス側とクライアント側のどちらになるのかを明確にする必要があります。
知的財産権とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利のことです。
クライアントからの依頼で作成したものであっても、知的財産権はフリーランスに帰属します。
もし知的財産権をクライアントに譲渡する場合は、作成したものをフリーランス側が一切使用できなくなる点に注意しましょう。
二次使用に伴ってライセンス料を徴収するなど、自分自身が不利にならない文言の追加を検討してください。
業務委託契約書を受け取ったら、再委託に関する記載をチェックしましょう。
再委託とは、クライアントから請け負った業務を他のフリーランスや業者に再度依頼することです。
情報漏洩対策の観点から、再委託を禁じているクライアントが多い傾向にあります。
禁止されているにもかかわらず再委託を行った場合は、大きなトラブルに発展するため注意が必要です。
自分自身で対応できるか不明瞭という方は、クライアントへの事前相談が必須となります。
フリーランスは、時に業務を通してクライアント側の企業秘密などを入手することがあります。
秘密保持とは、そういった情報を外に漏らさないための契約項目です。
業務委託契約書を受け取ったら、秘密保持が常識の範囲内であることを確認してください。
自分にとって負担になるほど過剰だと感じる場合は、クライアントにその旨を伝えることが大切です。
また、もし自分側に漏洩を防ぎたい情報がある場合は、詳細を明確に伝えるようにしましょう。
フリーランスの仕事をする場合、自分ではどうしようもできない事情で依頼された業務を全うできないケースがあります。
業務委託契約書内の不可抗力に関する項目は、そのような事態への対策として効果的です。
一般的な不可抗力には、自然災害、戦争、感染症などが含まれます。
不可抗力の項目を明確にしておくことにより、上記のような予期せぬ事態が起こった場合にクライアント側から責任追及されるリスクを回避することができます。
業務委託契約書における契約の解除は、契約中に片方の意志で契約を打ち切ることを指します。
相手側が原因で自分に損害や被害が起きた場合、契約や業務を継続するのは困難です。
自分の身を守るためにも、契約を解除できる条件などを明確にしておくようにしましょう。
主な解除条件として挙げられるのが、契約違反や個人情報漏洩などの発生です。
事前に条件を細かく決めておくことで、不利益を被った際に自分から契約を取り消すことができます。
業務委託契約書にないトラブルや不測の事態があった場合、クライアントとフリーランスで問題解決をしなければなりません。
協議に関する取り決めは、問題を解決するために双方が話し合いをすることが可能かという点について記載されています。
業務委託契約書に協議の項目がない場合、状況によっては裁判などに発展するケースもあります。
不必要な手間、費用、時間を省くためにも、クライアントと協議できるような内容になっているかを確認しましょう。
業務委託契約書を作成する際は、テンプレートを活用するのがおすすめです。
「具体的な書式が分からない」「文章を書くのは苦手だから業務委託契約書を作るのに時間がかかりそう」といった不安を持つフリーランスの方は、オンラインから無料ダウンロードできるテンプレートを使ってみましょう。
ゼロから文章を作成する必要がないので、時短になるのはもちろん、誤字脱字などを防ぐことにも繋がります。
業務委託契約書のテンプレートを使う際は、以下の項目が含まれているかどうかを確認してください。
必要な項目 |
業務内容 |
契約期間 |
報酬や支払い期限 |
納品の条件 |
知的財産権の帰属 |
再委託 |
秘密保持 |
不可抗力 |
契約の解除 |
協議 |
無料ダウンロードできるテンプレートを使う際は、サイトごとの特徴を理解することが大切です。
各サイトをよく確認し、種類が豊富、各項目が細かく解説されている、どのデバイスからも編集できる、キーワード検索ができる、操作方法が簡単といった特性やメリットを比較しましょう。
自分にとって使い勝手の良いサイトを利用することにより、業務委託契約に関する知識が少なめな方や書類の作成に苦手意識がある方でも明瞭かつ正確性の高い業務委託契約書を作成することができます。
業務委託契約書は、決められたプロセスに沿って交わします。
いざ業務委託契約を結ぶ場面になって慌てなくて済むように、事前にある程度の手順を把握しておきましょう。
業務委託契約書は、協議、作成、共有・修正、締結の順に進めていきます。
どのプロセスもトラブルを防ぐ上で非常に重要であり、最後まで決して気を抜くことはできません。
ここでは、各手順の詳細について、ポイントや注意すべき点も交えながらお話ししていきます。
業務委託契約を結ぶプロセスの中でも、契約内容の協議は特に大切です。
契約内容の協議とは、業務委託契約書に含まれる各項目に関する話し合いを指します。
業務内容、報酬、納品の条件、再委託、不可抗力といった項目の有無を確認するのはもちろん、各項目が明確に記載されているかもチェックする必要があります。
特に経費や手数料をはじめとする金銭的な条件については、抜けがないかきちんと確認しましょう。
契約内容の協議は、業務委託契約書の基盤となる作業です。
クライアントとの意思疎通をしっかり行うことで、後のトラブル防止に繋がります。
業務委託契約書内に記載される内容が決まったら、実際に契約書を作成します。
フリーランスとクライアントのどちらが作成するという決まりはないので、クライアントと相談して業務委託契約書の作成者を決めてください。
フリーランス側が作成する場合は、テンプレートを活用するのがおすすめです。
もし契約内容の協議で追加する項目が発生した場合は、取りこぼしがないように複数回にわたってチェックしましょう。
また、クライアントが独自のテンプレートでの作成を希望してきた場合は、必要な項目が全て含まれているかを確認することが大切です。
業務委託契約書が完成したら、共有と修正を行います。
フリーランス側が作成した場合は、クライアント側に確認を求めましょう。
もし作成者がクライアント側の場合は、契約内容の協議で決定した項目が全て含まれているか、内容が明瞭か、条件に間違いがないかを細かく確認してください。
共有・修正作業は、業務委託契約書を締結する前の最後のプロセスです。
このタイミングを逃すと誤った内容で契約を結ぶことになり、自分が不利な状況になる可能性も考えられます。
リスク回避の一環だということを理解し、業務委託契約書の隅々までしっかりと目を通しましょう。
最終プロセスは、業務委託契約書の締結です。
締結するにあたって、フリーランスとクライアントの双方が業務委託契約書に署名と捺印をする必要があります。
署名と捺印をする際の主な方法が、対面、郵送、メール、電子契約です。
対面や郵送は、書類でのやり取りを好む場合の契約方法です。
また、業務のリモート化に伴い、メールでのやり取りを希望するクライアントも多くなっています。
電子契約は、セキュリティ面を重視する方におすすめです。
業務委託契約書の書き換え防止や紛失対策になるので、最も安全性が高い契約方法となっています。
クライアントと業務委託契約書を交わさないまま仕事を進めた場合、後々のトラブルに繋がる可能性があります。
業務委託契約書がないということは、業務の取り決めに関する証拠が何もないということです。
「成果物を納品したのに報酬が振り込まれない」「最初にクライアントから聞いていた業務内容よりも広い範囲を指定された」などの事態に陥っても、フリーランスとクライアントがどのような取り決めをしていたかを証明することはできません。
最悪の場合は報酬が支払われないなどのリスクもあるため、仕事を請け負う際は注意が必要です。
また、報酬以外でトラブルになりやすいのが、知的財産権の譲渡です。
納品後も知的財産権を保持したいと考えるフリーランスがいる一方で、著作権を譲渡してほしいと考えるクライアントも存在します。
そのため、業務委託契約を結ばない状態で納品した場合、お互いが知的財産権を主張する事態に発展する可能性も考えられます。
正式な業務委託契約書が存在していない以上、民事裁判になっても自分の言い分が100%通るという保証はありません。
自分に不利な判決が下されるケースもあるため、業務委託契約をきちんと結んだ上で仕事を請け負うことが大切です。
業務委託契約書を交わすにあたって、「だいたいの流れは分かったけど細かい部分がイマイチ分からない」「読んでいたら逆に色々と疑問がわいてきた」という方もいるのではないでしょうか?
ここでは、業務委託契約書の種類、テンプレートによる項目の違い、内容を変更したい場合の対応についてQ&A形式で解説します。
フリーランスが疑問に感じやすい点を中心にまとめているので、業務委託契約をより深く理解するための参考にしてください。
業務委託契約書を交わす際、クライアント側が独自のテンプレートを用意していることがあります。
もし提示されたテンプレートが自分の知っているものと異なる場合は、「フリーランスが業務委託契約書を交わす際に注意すべき事」で解説した項目にあたる記述があるかどうかを確認しなければなりません。
例えテンプレートのスタイルに違いが見られても、おおまかな内容は同じはずです。
各項目をひとつずつ念入りにチェックしていき、フリーランスとクライアントの双方が納得できる契約内容であることを確認してから業務委託契約を結びましょう。
最初に協議して決めた内容を変更したい場合、改めて変更契約書を作成する必要があります。
口頭やメールなどでクライアント側が変更に同意しても、契約としての効力は100%ではありません。
後々トラブルになることを防ぐためにも、正式に変更したい旨をクライアントに伝えましょう。
クライアント側が了承したら、変更契約書を交わします。
その際、変更契約書として作成される場合もあれば、念書や各書という名称の書類になっているケースもあります。
念書や各書とは、契約内容の一部のみを変更した際に活用される書類です。
変更箇所の量によって変更契約書や念書・各書といった名称になりますが、どれも契約書としての効力は同じなので安心してください。
尚、変更契約書を交わす場合は、それに伴って元々の業務委託契約書が廃止となる旨を記載する必要があります。
廃止になる年月日の有無を確認し、最新の業務委託契約書がどれなのかを明確にしておきましょう。
業務委託契約書の注意点について知っておくことは、リスクを回避しながら仕事を請け負う上で非常に重要です。
曖昧な状態で業務委託契約を結んだ場合、大きなトラブルやフリーランス側の責任問題などに発展する恐れがあります。
フリーランス業に悪影響を及ぼす可能性もあるため、どのような点に注意すべきかをしっかりと把握するよう心掛けましょう。
また、業務委託契約書を交わす手順、テンプレートの詳細、契約を交わさない場合に被るリスクについても理解し、スムーズかつ安全に業務委託契約を結ぶための準備を整えておくことが大切です。