MONEY
2022.01.24
MONEY
2022.01.24
※本ページはプロモーションが含まれています
国民にとって最もなじみ深いともいえる消費税。普段の買い物で購入する物と同様に、フリーランスとして働いて得る報酬にも消費税は発生します。とはいえ、クライアントへの請求時に消費税を上乗せしてしまっていいのかや、納税する必要はあるのかなど、わからないことも多いはず。本記事では、フリーランスとして働くうえで知っておきたい消費税に関する知識を紹介します。
目次
そもそも消費税とは、商品やサービスの取引に対して課される税金のことをいいます。消費者が何かを購入したときに消費税を支払うことで事業者側が消費税を預かり、預かった消費税を事業者が国に納めるという仕組みです。つまり、消費税は直接消費者が国に納めるのではなく、事業者側が消費者から預かった消費税をまとめて国へ納めるということ。
フリーランスとして働く場合でも同様に、働いたことに対してクライアントが消費税を支払い、フリーランス側で消費税を預かります。預かった消費税額を申告し、まとめて国に納めるという同様の流れです。
フリーランスという働き方においては、消費税という概念を意識していないことが多くあります。本来は、クライアントへ消費税を上乗せした金額で請求していいのですが、それを知らずに請求していないパターンが多いのが特徴です。
後述しますが、売上が1,000万円以下の人は消費税の納付が免除されるため、請求をする意識が薄れるというのも要因として考えられます。
前項で述べたように、フリーランスの人はクライアントへ消費税を請求することができます。「報酬額は税込み」と事前に取り決めがあれば別ですが、そうでない場合は損をしないように消費税をしっかりと請求しましょう。
以下では、クライアントに消費税を請求するうえで重要なポイントについて解説しますので、チェックしてみてください。
クライアントと報酬の交渉や取り決めを行う際には、必ず税込の額なのか税抜の額なのかを明確にしておきましょう。できれば、純粋な報酬を取り決めて、それに消費税を載せて請求すると伝えるのがおすすめです。
税込か税抜かが明確になっていないと、双方ともに金額への認識が大きく異なってしまい、トラブルのもとになりかねません。
例えば、記事の制作を100,000円で請け負う取り決めをしていた場合、フリーランス側は消費税を含めて110,000円受け取る認識である一方、クライアント側が消費税を含めて100,000円支払う認識であると、10,000円もの大きな開きが出てしまいます。
金額が大きくなればなるほど認識のズレも大きくなってしまうため、トラブルを防ぐために必ず事前にすり合わせておくことが重要です。
クライアントへの請求書に消費税を載せる場合は、報酬額と消費税をわけて記載してください。報酬の小計額を記載した下に消費税を記載し、その下に合計額を書きましょう。以下の表を参考にしてみてください。
品目 |
単価 |
数量 |
金額 |
記事制作費 |
10,000 |
2 |
¥20,000 |
取材費 |
20,000 |
2 |
¥40,000 |
小計 |
¥60,000 |
||
消費税 |
¥6,000 |
||
合計 |
¥66,000 |
上記のように、品目とそれぞれの金額を書いたあとで、最後に小計・消費税・合計を順番に記載するのが一般的です。
以下では、クライアントから受け取った消費税をどうすればいいのかについて解説します。消費税を納付しなければいけない人とそうでない人がいるので、チェックしてみてください。
消費税は、以下のいずれかに当てはまる場合は納税が免除されます。
上記に当てはまる人を「免税事業者」と呼びます。免税事業者に当てはまる人は、クライアントから消費税を受け取っても納税する必要がありません。納税する必要がない人であってもクライアントに消費税を請求することは可能であり、もらっておいた方が得なので必ず請求するようにしましょう。
反対に、消費税を納めなければいけない人のことを「課税事業者」と呼びます。課税事業者として認定される基準は、以下のとおりです。
上記のとおり、2年前の売上が1,000万円を超えた時点から課税事業者と認定され、消費税の納付義務が発生します。仮に2年前の売上が1,000万円以下であっても、1年前の半年間で売上が1,000万円を超えてしまうと、消費税を納めなければいけません。
また、あえて課税事業者を選んだ方がメリットがある事業者の場合は、「消費税課税事業者選択届出書」というものを提出することがあります。消費税課税事業者選択届出書を提出したあとからは、課税事業者として消費税の納付が必要に。
ちなみに、あえて課税事業者になることによるメリットには以下のようなものがあります。
【①預かった消費税よりも支払った消費税の方が多くなった場合】
消費税は、預かった消費税から支払った消費税を差し引き、納税額が決まります。つまり、預かった消費税よりも支払った消費税が多くなった場合には、消費税は納付するのではなく還付されるということです。以下の計算式で例えてみましょう。
100,000円(預かった消費税)− 150,000円(支払った消費税)= −50,000円 |
上記のように、支払った消費税が多くなると納付する消費税額はマイナス50,000円になるため、50,000円が返ってくることになります。上記のようなケースでは、あえて課税事業者になることを選ぶ事業者がほとんどです。
【②インボイス制度が開始された場合】
2022年1月時点では、2023年からインボイス制度という新しい制度が始まると言われています。インボイス制度が開始されると、あえて課税事業者を選ぶ人が増える可能性があります。インボイス制度の概要や、なぜ課税事業者を選んだ方がいいのか等については後述しますので、チェックしてみてください。
いざ自分が消費税を納める立場の課税事業者になった場合に困らないよう、以下で解説する消費税の計算方法や納付方法について確認しておきましょう。
まずは、消費税の計算方法について解説します。消費税の計算方法には、以下の2パターンがあります。
消費税を計算する方法の1つ目は、本則課税という方法です。本則課税は消費税の計算に原則として用いられる方法であり、標準の計算方法であるといえます。預かった消費税から支払った消費税を差し引き、納付税額を計算するシンプルな考え方です。以下で例を出して計算してみましょう。
上記のケースだと、以下の計算になります。
30万円(商品の売上のうち消費者から預かった消費税)− 10万円(商品の仕入れ時に支払った消費税)= 20万円 |
つまり、上記のケースにおいて納付しなければいけない消費税は、20万円だということがわかります。これが一般的に用いられる本則課税で計算する方法です。
2つ目の簡易課税という計算方法は主に小規模事業者向けに設けられている制度で、本則課税よりも簡易的に計算ができる方法です。適用できる条件には、以下の2つがあります。
売上が5,000万円以下の事業者であれば、上記「消費税簡易課税制度選択届出書」を届け出ることで簡易課税での計算が可能になります。
本則課税では、預かった消費税から支払った消費税を差し引かなければいけないため、いくら消費税を支払ったのかを帳簿から探し出すなど細かい情報整理が必要です。一方簡易課税では、その必要がないため小規模事業者でも楽に計算ができるといわれています。実際の計算方法は、以下のとおりです。
預かった消費税−預かった消費税×みなし仕入率=納付消費税額 |
みなし仕入率は、業種によってそれぞれ異なります。小売業で例えるとみなし仕入率は80%なので、数字をあてはめると以下のように計算できます。
30万円(預かった消費税)− 30万円(預かった消費税)×80%=6万円 |
上記のように、簡易課税で計算すると預かった消費税だけを帳簿で確認し、決まったみなし仕入率をかけるだけでいいため簡単です。
一般的に、みなし仕入率が高く設定されている業種であれば、簡易課税の方が有利になることが多いといわれています。また、みなし仕入率が高くない業種であっても、消費税のかからない経費が多い場合は簡易課税の方が有利であることが多いのも特徴です。とはいえ、事業内容や状況によってどちらが有利かはそれぞれ異なるため、じっくりと検討してから決めるようにしましょう。
参考として、以下の表で業種別のみなし仕入率を記載しますので参考にしてみてください。
事業区分 |
みなし仕入率 |
該当事業 |
第一種 |
90% |
卸売業 |
第二種 |
80% |
小売業、農業・林業・漁業のうち飲食料品の譲渡に係る事業 |
第三種 |
70% |
農業・林業・漁業のう飲食料品の譲渡に係らない事業、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業(第一種事業、第二種事業に該当するもの、加工賃その他これに類する料金が対価である役務の提供は除く) |
第四種 |
60% |
飲食業など第一種事業・第二種事業・第三種事業・第五種事業・第六種事業以外の事業 |
第五種 |
50% |
運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(第一種事業から第三種事業までの事業に該当する事業を除く) |
第六種 |
40% |
不動産業 |
消費税は、前年の1月〜12月までの分をその年の2〜3月に行われる確定申告時に申告を行います。2021年1月〜12月までの消費税を、2022年2〜3月に確定申告して期限内に納付するということです。
消費税の納付期限は、確定申告の期限内と同様になるため忘れずに納付しましょう。消費税の納付は金融機関か税務署で行います。確定申告時に案内が出るため、チェックして指定の方法で納付を行ってください。
普段自分で帳簿付けを行っていると、確定申告時に消費税の計算を行うのが大変です。普段から会計ソフトで帳簿付けを行い、確定申告時に必要情報のみを登録・設定すれば、簡単に消費税の申告ができます。
ソフトによっては無料で使えたり、有料であっても年間数千円程度の負担で済むため、できる限り会計ソフトを導入するのがおすすめです。
普段の帳簿付けも家計簿感覚で簡単に入力ができ、確定申告の際にも質問に答える感覚で必要情報を入力するだけでいいので、専門知識がいりません。正確に申告をするためや、スムーズに申告をするためには会計ソフトの利用がおすすめです。
前項でも少し触れたインボイス制度は、現時点では2023年から開始される予定です。インボイス制度が取り入れられると、フリーランスの人が損をしたり働きづらくなったりする可能性があると指摘されています。
インボイス制度とは、登録された事業者に限り、法的に有効な「適格請求書(インボイス)」というものを発行することができる制度です。言い方を変えると、法的に有効な適格請求書がないと、支払った消費税がいくらなのかを確定申告で証明することができなくなってしまう制度でもあります。
上記の制度が取り入れられることで、フリーランスにとってどのような影響があるのかを以下でわかりやすく解説します。
なぜフリーランスが損をしたり働きづらくなったりする可能性があるのかを知るうえで、まずは「仕入税額控除」というものを理解する必要があります。以下で、3社の取引を例に出して見てみましょう。
上記3社のケースで見てみると、まずA社がB社へ商品を発注すると、B社はA社へ請求書を発行して商品代金をもらうことになります。その請求書をもとに、A社は消費税を含めてB社へお金を支払うので、B社はA社の消費税を預かったことになります。
一方、B社がC社から部品を購入すると、今度はC社がB社に請求書を発行し、B社が消費税をC社に支払うことに。C社は、B社の消費税を預かったことになります。
上記の流れを見ると、1つの商品を作りあげるまでに消費税が2回発生しています。消費税が発生したのは、以下の2つの時点です。
いずれの時点でも同じ1つの商品に対して消費税が発生しているので、二重で消費税が支払われていることになってしまいます。消費税は1つの商品やサービスに対して1回しか発生しないものなので、重複した分は差し引かなくてはいけません。この差し引き(控除)のことを「仕入税額控除」と呼びます。
A社B社C社の例でいうと、B社が消費税を預かった側でもあり支払った側でもあるので、B社が控除を受けなければいけません。B社がA社から預かった消費税が20万円、B社がC社へ支払った消費税が15万円だとすると、B社は20万円から15万円を差し引いた5万円だけを税務署へ納税するということです。このとき、B社は15万円の控除を受けていることになります。
20万円(A社から預かった消費税)− 15万円(C社へ支払った消費税)= 5万円(B社が納税する消費税額) →すでにB社がC社へ支払っていた消費税額15万円が控除されたことになる。 |
このように、消費税を納付する課税事業者はすべて、上記の前提に基づいて消費税の控除を受けているのです。
上記の例では、B社がA社に自ら発行した請求書に加えて、C社から発行された請求書の情報を証拠として税務署へ提出し、控除を受けることになります。
これまでは、控除を受ける際に提出する請求書は何でもよかったのですが、インボイス制度が導入されると、国から登録された事業者が発行した適格請求書でないと法的効力を持たず、控除の際に提出しても認められなくなってしまいます。これがインボイス制度の大きなポイントです。
仕入税額控除について理解したところで、次になぜフリーランスの人が働きづらくなるのかについて詳しく解説します。
インボイス制度が始まると、登録されている事業者が発行した適格請求書がないと、上記の仕入税額控除を受けることができません。これにより、適格請求書を発行できない登録外の事業者とは、取引をしたくないという企業が増える可能性が懸念されています。理由を先程の例で見てみましょう。
B社はA社から消費税を預かり、さらにC社へ消費税の支払いもしていた立場です。B社はA社へ発行した請求書と、C社から発行された請求書をもとに仕入税額控除を国に申請します。しかし、仮にC社が登録された事業者でないとすると、C社は法的効力のある適格請求書を発行できないため、B社は仕入税額控除が受けられないことになります。
国がC社を登録事業者として認めていないため、C社から発行された請求書をB社が国に提出をしても、B社がC社に消費税を支払った証拠にならないということです。
B社は本来なら控除を受けて5万円だけを納付すればよかったものが、このケースだとA社から預かった20万円をまるまる納付しなければいけなくなるということになります。B社はC社へ15万円の消費税を支払っているにも関わらず、さらにA社から預かった20万円をすべて納付しなければいけないということです。
そうなると、B社は登録事業者でないC社と取引をすると損をしてしまうことにつながるため、登録事業者である別の取引先に乗り換えてしまう可能性があります。
取引中止の懸念だけでなく、登録されていない事業者に消費税を上乗せして支払うと損をするため、取引はするものの消費税分は支払いたくないと渋る会社が増える可能性があるのも懸念点です。
となると、C社を含め、登録されていない事業者は全員インボイス制度が利用できるよう登録を受ければいいように聞こえますが、ここで1つの壁が生じてきます。以下で詳しく解説するので、続けて確認してみてください。
取引を中止されると困るC社のような会社は、インボイス制度が利用できるようにしたいと思うのが当然の流れですが、ここで壁となるのがインボイス制度は課税事業者しか利用できないということです。
仮にC社が売上1,000万円以下の会社で免税事業者だった場合は、インボイス制度が利用できません。インボイス制度は、課税事業者として消費税を納めている事業者でないと利用できないため、C社が免税事業者である限りはB社へ法的効力のある適格請求書を発行することができなくなります。
つまり、免税事業者のフリーランスは、インボイス制度が利用できないことにより仕事が減るリスクや、消費税を支払ってもらえないリスクにさらされることになるということです。
インボイス制度が、免税事業者であるフリーランスの人にとって働きづらくなってしまう要因であることがわかりました。では、仕事が減るリスクを回避するにはどうすればいいのでしょうか。
取引が中止されることを回避する方法は、本来免税事業者の条件に当てはまっている場合であっても、あえて課税事業者として登録することしかありません。
先述したとおり、「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば免税事業者であっても課税事業者になることが可能です。インボイス制度は、このように課税事業者を増やすことが目的であるともいわれています。
あえて課税事業者になることでインボイス制度が利用できるようになり、仕事が減るリスクを回避することはできます。ただし、課税事業者になれば、売上が1,000万円以下であっても消費税を納付しなければいけなくなる点には注意が必要です。
仕事が減る心配はなくなっても、これまで報酬にプラスして請求できていた消費税が売上から減ることになります。このように、免税事業者にとっては不都合なことが多い新制度として議論を呼んでいるのが、インボイス制度です。
本記事では、フリーランスとして働くうえでの消費税について解説しました。消費税の免税事業者に当てはまる人は、消費税を請求したほうが得をするので必ず請求するようにしましょう。売上が1,000万円を超えるなど条件にあてはまれば納税が必要になるため、忘れず申告をすることが重要です。
2023年に始まるといわれているインボイス制度では、いまのうちから対策を考えておく必要があります。メリットやデメリット、クライアントの状況などを鑑みて、どうすべきかしっかりと策を練っておきましょう。