ここからはチームに分かれて、実在する企業を例に考え方を学んでいきます。編集部スタッフの参加したCチームでは、某大手航空会社が題材でした。
初めにチーム内で自己紹介。アプリ開発のプロダクトマネージャーさんや、デザイン思考をすでに会社で取り入れているというメーカー勤務の方等、様々な職種の人たちが集まりました。
次に、あらかじめ設定されたペルソナのスペックや思考、趣味嗜好を読み込みます。
「日本企業の年功序列に辟易して、日系IT企業からスタートアップへ転職」「明日急に出張なんて…アシスタントも帰っちゃったし、自分で航空券の予約もしなくちゃ。」等、細かいところまで設定されています。各自読み終えたら、ペルソナに対して感じたことをとにかく付箋にメモ。チームで出し合った結果は、一部ですが次のようになりました。ここで当初の【ポイント1】が役に立ちますよ。
【観察】
・現実的、効率重視、プライドが高そう
・ITに詳しいため、こだわりがある
・頼れる人やツールがあれば頼って、色々なことをまとめて考えたい
【共感】
・やることがいっぱい(仕事、パッキング、航空券手配、宿泊手配等)
【洞察】
・機内でのWi-Fi利用予定、仕事をしながら向かいたい
・飛行機の搭乗時間だけでなく、空港までの乗換案内も欲しい
そして挙がった要素から、このペルソナが抱えている課題やニーズを検討していきます。
ここでは、航空券の予約から搭乗、目的地到着までの手続きを簡単に、確実に、速く済ませたいという気持ちを汲んで「何を見て選べばよいか分からない、リアルタイムで手続きのレスポンスが欲しい」ということをペルソナの抱えている課題としました。
ここまで細かく考えて初めて、課題解決のために何が出来るか、案を出し合います。途中行き詰まったCチームを見て、「この時点では、“どこでもドア”のような非現実的なアイディアでもOKですよ」と講師の田澤さんがアドバイスしてくださいました。大事なのは限られた時間の中でとにかく考えて、とにかくアウトプットしていくことなんですね。
結果的に、予約・搭乗・目的地に合わせて次のソリューションを絞り出しました。
予約…キャンセルや変更も含め手続きの簡略化、スケジュールのリマインドをするアプリをつくる
搭乗…手荷物検査なし、自分のところに飛行機が来てくれるウーバーフライト、客室乗務員を減らしIT化
目的地…タクシー手配、宿泊先の予約、飲食店提案
ここでソリューションがうまく出てこない場合は、ペルソナの課題を見直す必要があるそうです。なるほど。
絞り出した内容をさらに吟味して、『ウーバーフライト』としたアプリケーションを製作し、予約や振替等の手続きはもちろん、空港に向かうまでのスケジュールも含めたリマインド機能、目的地の宿泊先や飲食店予約、問い合わせはチャットでbotが即回答する等、旅の全てをこれ一つで解決できるサービスをつくることに決まりました。ここで出すサービスのネーミングも、顧客に刺さるような、かつ分かりやすいものである必要があるのでとっても重要。
そしていくつかのソリューションを絞り出して初めて、【ポイント2】が出てきます。『ウーバーフライト』は果たして3つの価値全てに該当するのか、検討しました。
【ビジネス価値】
・bot対応を蓄積することで、顧客データ(傾向、嗜好性等)を得られる
・ブランドロイヤリティが高まる
・宿泊施設やレストラン、お土産店の広告収入を得られる
【ソリューション価値】
・スマホ、位置情報、チャットbot、AI/IoTによって実現可能
【顧客価値】
・出発から目的地到着まで、簡単で正確に予約手配や搭乗手続きができ、調べる手間も減る
・心地よいサービスを受けられ、仕事(出張、機内作業)をする上での懸念がなくなる
・時間に余裕ができ、プライベートでの利用についても考えられるようになる
・普段使用しているSNSへ書き込みたくなる
3つとも、当てはまりました! よって、Cチームの『ウーバーフライト』というソリューションは、実現できてかつその価値もありそうです!
初めは真っ白だったホワイトボードも、終わるころには付箋だらけに。